国語辞典からも、百科事典からも、学校の教科書からも「箒（ほうき）」という言葉が消えて、１５０年以上が経った。
デルタ氏は、この時代にタイムマシーンでたまたま遊びに来ていた。彼がショーウインドーを興味深く眺めていると、そこには「箒」がいかなる商品よりも高く売られていた。そして、それを購入して行く人がたくさんいるから不思議である。なぜならば、この時代、ハウスキーピングの仕事は、人ではなく家事用アンドロイドが担っているはずだからである。そのショーウインドーの「箒」の前には、
「バイヤーの一押し！これはHōki(箒、broom)といい、庭や部屋の中を綺麗にするだけではなく、皆さんの健康の増進にも役立つ優れモノです。一家に一本どうぞ！」
と、商品が紹介されていた。
「何を言っているんだっ！」
デルタ氏はつぶやいた。
「元々、人間は楽な方へ楽な方へと考え、掃除機、ロボット掃除機、そして家事用アンドロイドを発明し、発達させていったのではないか！？掃除もレトロブームか、、、まったく、いつの時代も世の中のブームにはついていけないなぁ～。」
この時代にやや嫌気がさしたデルタ氏は、自分の時代、自宅へと帰ってきた。
そして、デルタ氏は、
「足腰を鍛えるには、これが一番さっ！」
と、昨日、デパートから買ってきた『Zoukin（雑巾、dustcloth）』と呼ばれるモノで、颯爽とリビングのフロアを拭き始めた。。。
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