時間よ、止まれ! Part 2

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悠人が静寂に包まれ、泣きじゃくった翌日、悠人には明らかな変化が訪れていた。
幼稚園では一人で遊ぶことが多かった悠人が、入園して初めて、てっちゃん、コウちゃんたちとグランドを一緒に走り回っていた。ヨウコ先生もその風景を不思議顔で眺めていた。
その日、幼稚園に迎えにきてくれたママに、先生がそっと話かけた。
「悠人くん、お家で何かあったんですか?」
「えっ?」
「今日の悠人くん、とっても元気で、みんなと走り回っていたものですから。。。」
「そうなんですね。そう言えば、昨日のお昼、何か怖い夢をみたのか、泣きじゃくっていたと義母から聞きはしましたが。それ以外は何も。。。」
「そうですか?」
「ママっ、帰ろうっ。」
「あ、うん。」
活き活きとしている悠人のいつもと違う感じは、超絶鈍感なママでさえ分かる変わり様だったようだ。
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「スポーツ大会優勝」の夜。
「あれ~、悠人は?」
帰宅したばかりのパパがママに尋ねた。
「もう、寝ちゃったみたい。」
「まだ、八時だよ。」
「多分、スポーツ大会で疲れたんじゃない?優勝したんだって。」
「そうか。だったら良いんだけど。」
翌朝、悠人はいつもよりちょっと遅く起きて、階段を降りてきた。
「おはぁよぉう。」
「悠人、おはよう。」
「あら、悠人、また背が伸びた?パジャマ、小さくなったんじゃない?」
「うん?」
悠人がふと手元を見ると、明らかに袖が短く、さらに足元を見てみると、確かにズボンが短くなっていた。
「あれ?」
ちょっとだけ首をかしげたが、寝ぼけまなこのまま洗面所へ向かった。
朝食を済ませてズボンをはくと、
「あれ?ズボンも小さくなった?」
「悠人、急がないと遅刻しちゃうよ。」
「あ、うん。」
悠人は急いで、階段を駆け降りた。
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凜ちゃんとの初デートの日の夜八時。
いつも深夜十二時前後に寝ることが普通の悠人だが、この日は、猛烈な睡魔が押し寄せていた。
『どうしたんだろう?』
さすがに悠人も自身の体調変化に疑問を呈していた。
『そう言えば。スポーツ大会の後も、睡魔に襲われたな~。』
そのまま、悠人はベッドに倒れこんだ。
そして翌朝。
「危ない、危ない。」
悠人はまさに遅刻するギリギリの時間に目が覚めた。急いで洗面所に向かって顔を洗い、ふと鏡に目をやった。頭のてっぺんに寝癖が数本。
『やれやれ』
悠人がヘアスプレーで整えようとすると、そのはねた髪の中に白髪が1本。
「えっ!」
合わせ鏡をして襟足を見てみると、サイドにまた数本の白髪を見つけた。数日前に散髪したときにはまったくなかった白髪が数本、急に変わったことになる。
『なるほど。。。』
悠人はここでやっと、時間を止める、このシステムを理解した。
『これまでの記憶を紐解くと、恐らく、時間を止めると、自分の人生が進み、自分の寿命が縮まることになるのか。』
「やれやれ、、、そんなシステムになっていたのか。」
悠人は思わず、心の声を発した。。。

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